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友達フォトアルバム

  • 1-3-2 たったの五千六百円なのよ・・・
    安部公房作 カトレア読書会演出 「友達」 2006年11月30日(木)~12月3日(日) 手織座にて

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2006年12月15日 (金)

イプセン作「人民の敵」(※本によっては「民衆の敵」)

12月14日(木)19:00~、巣鴨にて、第二十九回カトレア読書会が開かれました。演劇発表会の稽古のために10月中旬からお休みしておりましたが、久々の通常通りの読書会であります。
参加者は、北川さん、笠原さん、輿石さん、南波さん、秦さん、市村さん、久々登場の川崎さん、林。そして今回の演劇発表会「友達」のチラシを見て興味を持って連絡してきてくれました、俳優としてご活躍の白州さんの以上9名。

テキストは、イプセン作「人民の敵」(毛利三彌訳)。休憩入れずにおよそ三時間。
舞台はノルウェイ南部のとある温泉町。住民たちの生活は、町にある唯一の温泉保養施設の繁盛によって成り立っていた。
ところが温泉施設付の医師であるストックマン博士は、独自の綿密な調査の結果、温泉施設が山にある皮なめし工場から流れてくる汚水によって激しく汚染されていることを発見する。正義感の強い博士は、町長はじめ町の人々に、ただちに温泉施設の大改修工事を行うように訴える。博士の実の兄である町長は温泉に悪い評判が立って、客足が遠のく事を恐れ、「社会公共の利益のため」として、何とかして弟に公表を思いとどまらせようとする。しかし博士は「それは社会や、町民を騙す詐欺だ!」と言って決して讓らない。
そんな博士に自由主義を標榜する町の小さな新聞社『人民新報』の主筆も「古い特権階級を粉砕し、支配当局を撲滅するために、今回のことは好機である」と全面的に博士に協力することを表明。また家主組合の長を兼ねる新聞印刷所主も組合を挙げて後援すると言う。こうして「自由な独立した新聞」と「堅実なる多数」を身方に付けて、記者からは「民衆の友」とまで煽てられた博士は、「自分の背後には絶対多数がついている。真理と民衆はかならず勝つ」と悦に入るのでああった。
しかし事態は博士の思惑とは裏腹な方向へ転がっていく。「温泉の抜本的な改良工事には巨額の負債と最低二年にわたる温泉施設の閉鎖を余儀なくされる」と町長から聞かされるや、組合長は怖気づき途端に寢返る。また「堅実なる多数」である中産階級の購買層を失う事を恐れた『人民新報』の人々も、博士の論文掲載を拒否し、町長の虚偽に満ちた論文を載せてしまう。ついに博士は町長糾弾の集会を無理やりに開き、町民に訴えるが、デマ記事を読まされた町民たちの間では既に「悪いのは博士」という感想が大勢を占め、集会では激しい野次や罵声を博士に浴びせかけられる。新聞に裏切られ、町民にも絶望した博士にとって、もはや汚染など問題ではなく、「真理と自由とのもっとも危険な敵は堅実なる多数である!多数が正義を有することは断じてない!」と今度は町民や、ついには地球上を占める絶対多数糾弾へと演説は発展してしまう。この演説によって博士は、町民の多数決による決議によって「民衆の敵」の烙印を押されてしまう。とうとう温泉付医師も免職となり、家には石を投げ込まれ、博士家族はこの地を離れざるを得ないことになるのだが・・・・

非常に社会性の強いアピールのはっきりした作品でした。そう、現代日本で言えば、去年から問題になっている「耐震偽装」とか・・・etc。ところが、どうも筆者は、個人的な感想述べれば、この正義感溢るストックマン博士に感情移入できなかった。その理由の一つには、もはや「絶対多数」が正義でないことは、現代に生きる私たちにとって、嫌というほど思い知らされた自明のことであり、100年前の社会的発見を、そう声高に今更叫ばれてもなあ、という奇妙な感慨が湧いてくるからでしょう。
博士は「正しいのは常に少数派」と言い、もちろんそうだと思います。終幕では家族を前に、「最大の強者は、世界にただ独り立つ人間である」と言い放ち、永遠の反抗を誓うのですが、21世紀に生きる、イプセンからすると後の世である私たちにとって「そりゃあもう分かってるからさあ、その後をどうすりゃいいか考えてるんだよ!」という、いらいらした気持ちにもさせられるからでしょう。つまり、やはりストックマンは「私たち」なのであり、しかし、「愚かなる絶対多数」、「正しいのは常に少数派」、「強者は独りで立つもの」という、「ストックマン=私たちの」アピール以後、イプセンの生きた100年前とおよそ状況は何も変わっておらず、未だ何も手立てが打たれず、むしろ社会状況は悪化の一途たどっていることへの諦めにも似た焦燥感を抱えたまま、いまさら自明のことを声高に叫ぶものへの拒否感とも言えましょうか・・・いえいえ、100年前に市民社会の嘘を発見したストックマン博士になんの罪もありません。彼は孤高の英雄です。しかし、その孤高さゆえに、却って現代の読者である私は、わかりきったことを声高に叫んでいるストックマンへ意地悪にも似た感情を抱き、言ってみれば物語に登場する、彼に石もて追う絶対多数である町民たちと同じ立場に立っているというこの奇妙なパラドクス!

一連の社旗批判としてのイプセン作品では、あまり知られていない作品だったようですが、イプセン没後100年の今年燐光群がこの作品を上演したようですね。しかも博士を女性にしたりと、いろいろ策を練っていたようで、一体どんな作品になったのか見たかったものです。そういえば、会の後の忘年会に参加した近藤くんに教えられたのですが、スティーブ・マックィーン主演・製作総指揮で映画にもなっていたそうで。

会終了後は、先にも書きましたとおり近藤くん、帆足さんも参加し、カトレア忘年会へ突入。いつもお世話になる「すがも亭」さんで鍋を囲んでの会とあいなりました。

来週は20日水曜日に今年最後の第三十回カトレア読書会です。場所は今のところ、中野か駒込のどちらがいいかを参加者に要望をリサーチ中。テキストは、今回コピーして読まなかったやはりイプセンの「ゆうれい」(毛利三彌訳)を読みたいと思います。

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